夏から派遣でマイナンバーの仕事をしている私は、最近つくづく「これで日本がダメになったんだな・・」と思うことがあります。

それはジョブ型雇用を派遣会社からすることです。

「ジョブ型雇用」というのは、企業が人を採用するときに職務・勤務地・時間などの条件を明確に決めて雇用契約を結び、雇用された側はその契約の範囲内で働く・・というシステムです。

別の部署への移動や転勤はなく、昇給や降格も基本的にはありません。
基本的に短期間のもの(長くて1か月から3か月契約)で、時給が高いものも多いです。

自分の専門分野だけしっかりやればいいのね。それはそれで、バイトとかパートと割り切ったらいいことなんじゃない・・?
そう思った方もいらっしゃるかもしれません。

でも私はこの5か月、派遣社員としてジョブ型雇用を経験してきて、あまりにもむごい現実を見ることになりました。

それは私のことではなく、誰よりも熱心に、真摯に仕事をしてきたリーダーさんたちに一番ひどい結果をもたらし、絶望感や虚無感を与えるものでした。

今日はそのリーダーさんたちのかわりに、どういうことがおこったかを書いておこうと思います。

私達の区役所には、マイナンバー課に昨年から働いていた方が二人いました。
その二人はK社という派遣会社から派遣されてきていました。
二人とも週に5日、フルタイムの勤務をされていました。

どちらももともと、結婚しても子育てをしながらフルタイムで一日も休まずに働き続けてきた方々で、責任感が強く、本当に素晴らしい仕事をされる方でした。(一人はコロナで事業所が閉店、一人は体を壊して今までの正社員の職場を離れました)

ところで区役所ではその区役所を管轄する市が、3・4か月に一度、仕事を委託する派遣会社を落札します。

マイナンバー課の仕事をするパートさんをさらに続投で募集する場合、それを公募するのです。

そこにA社・B社・C社・D社・・と各派遣会社が手を上げます。

「私の会社ではトータルいくらで○○人のスタッフをその期間用意できます。ですから我が社に決めてください」という申し入れをするのです。

セリは、品物を前に「五万円!」「五万二千円!」「五万五千円!」と高い金額をつけていって一番高い金額をつけた人が落札しますが、これはその逆。どこが一円でも安いか?で決めるのです。

しかも、他社が何円で入札したかは知ることができません。

決められた日の決められた時間に結果発表がされます。

その時初めて、全ての派遣会社はお互いがいくらで入札したかを知ることができるのです。
(一般人もその値段や結果は検索すれば、見ることができます)

話が戻って私達のリーダーたちは、昨年からK社という派遣会社から派遣されてマイナンバー課の仕事をしてきました。

今年の7月、新たに入札するということになり、結果はF社が一番安い値段をつけて落札しました。

そのF社の時給は、今までのK社の時給1400円からなんと240円も下がり、1160円です。
一日7・5時間働くので、一日あたり今までより1800円も下がります。

一か月に10日働いていた人なら18000円、20日働いていた人なら36000円も減ってしまうので、10人いたメンバーの8人が辞めてしまいました。

ただ、救いがありました。
残った二人は経験者なので、F社は「リーダー価格」として前のK社と同じく1400円をつけてくれたそうです。

それによって私の働いている区役所では2人のリーダーがいることになりました。

そこから4か月。また市役所は新しく入札すると発表。
私を含めほとんどの人が、F社はほとんど県の最低時給なので、引き続きここになるのだろうと思っていました。

ところが結果は、またK社が落札したのです。

実はもしそのままF社が落札できていれば、週に5日働いているリーダーさんたちは、有給が10日もらえるはずでした。

しかし違うK社が派遣元となったため、その有給の資格は消えてしまいました。

そしてリーダーさんたちは派遣元は変わったとはいえ、同じ区役所で1年も働いているので超超ベテランになっていて、またもともと勉強熱心なこともあって、社員よりも知っているのでは・・?というくらい、あらゆることに対応できる実力があります。

ですが、今度のK社はリーダー価格は1350円、リーダー価格を払う人は一名だけ、もう一人は新入社員と同じ1250円にする。という条件を発表したのです。

そして、もし二人でリーダーをやりたいのなら、一日交替で担当してくださいと言いました。

これはどういうことかというと、私たちのような夏から入ってきたばかりの平社員にとっては時給が90円上がり、一日あたり675円高くなります。

しかし1年以上やってきている大ベテランのリーダーが一人残ったとすると、一日あたり375円のマイナス。
20日勤務だったら7500円今までより低くなります。

では、もしも二人ともリーダーが残ったらどうなるでしょう。
10日分はリーダー価格で働くのでマイナス3750円。
10日分は平社員価格で働くのですから一日あたりマイナス1125円、10日で11250円のマイナスです。
足すと15000円も二人とも今よりも減給になってしまうのです。

がんばって毎日一年間働いてきて、どんどん何でもできるようになって、何もわからない後輩には親切に一生懸命に教えてくれて、社員以上の働きをし続けてきた人たちがどうしてこんなひどいことになってしまうんだろう・・。。

まるで恩をあだで返すようです。

こんなに真摯に心をこめて一生懸命に働いてきた人たちが、何故こんな思いをしなくてはならないんだろう。

またちょうどその頃、区役所側からあなた達は交通整理のような仕事だけしてくれればいいと言われるような出来事もありました。

日に日に元気がなくなっていくリーダーたちの顔を見るたび、私のほうが辛く泣きたくなってしまいました。

そして結果的に一人のリーダーが身を引き、健康上の問題で近くでしか働けないリーダーが続けることになりました。

とは言っても私達の区では最長であと3か月、それ以降は場所が他に移るため、延長はないことが決まっています。

去っていくリーダーが「ね・・なんでこんなふうなんだろうね。嫌になっちゃうね。ほんとにおかしいと思うわ」
とつぶやいた言葉が忘れられません。

私が感じたのは、人はこんな働き方はしてはいけないんだ、ということです。

こんな働き方をしていたら、人は自尊心をなくし成長することを無意識にやめてしまうようになります。

そしてこれは、まるで動作をするペッパー君になれと言っているのと同じです。

採用側の都合でどんどん派遣会社を変え、一日も休まず頑張ってきても有給も一日ももらえないことになり、時給もぐんぐん下がっていく。
リーダーとして人一倍頑張って仕事をしてきて、どうしてそんな目にあわなければならないのでしょう。

私はこんな働き方は嫌だし、おかしいと思います。

もっと違う働き方を考えて作っていきたいと、それ以来アイデアをずっと考え続けています。

おすすめの記事